ひかるたちは、ダッシュで沐浴場入口まで来た。しかし、沐浴場には入れてもらえなかった。
門番、
「ここは、女王専用の沐浴場である。」
とびらの向こうから声が聞こえる。
女王、
「いい? お前たち? これから、この果実をスライスして黄金の果実風呂を作るから。果実をうす〜く切って、沐浴場全体に散らしてくれる?」
門番、
「ということで、女王さまは、果実風呂の用意をしてらっしゃる。中に入ることは、まかりならん。」
残念ながら、正面から沐浴場に入ることはできそうにない。このままでは、女神の果実は、全部スライスされてしまう。
サンディ、
「こうなったら、手段は選ばない。お城の人に聞き込みして、沐浴場に入る方法を見つけるのよ。」
すると、近くにいた侍女が、
「わたしたちは、きがねなく入れるから考えたことがなかったわ。」 しかし、
「屋上にいるスケベなオジサンなら、そのへんのことくわしいんじゃない。」と言っていた。
ということで、屋上に向かう。
3Fの宝箱にまほうのカギがあったので拾っておいた。
スケベなおじさんは、屋上で釣りをしていた。事情を説明すると、とっておきの情報を教えてくれた。
「ここを流れる水は、沐浴場に流れ落ちています。すなわち、ここに飛び込めば、沐浴場にたどり着けてしまうんですよ。」。普通ならば大けがをしてしまうところだが、
ひかるは、以前、上空から滝つぼに落ちても助かっている。ということで、スケベなおじさんも落ちざまを見たいと言うことで、
ひかるは、ここから落ちて沐浴場に向かうことになった。
近くにいた、侍女2人が、ひかるが落ちてくるなり、悲鳴をあげた。
すぐに女王が
ひかるの元にきた。
女王、
「ちょっと、あなた? ここがどういう場所かご存じ!? いったいなにをしに? もしかして、あなた・・・、黄金の果実を取り返しに来たのかしら? あははははは。もう手遅れだわ。見ての通り、果実はぜ〜んぶスライスしてしまったもの!」
そのスライスしたうちの1つをアノンが食べた。すると、アノンは、突然、巨大化した。女王は、悲鳴を上げた。
「ひぃぃ! アノンちゃんがぁ!! キャーッ! たーすーけーてー!!」アノンは、女王を掴んで、近くの井戸に行ってしまった。
近くの侍女は、果実は、食べたものをバケモノにする悪魔の果実で女王は天罰がくだったのだろうと思った。しかし、駆け付けたジーラは違った。
「ご両親の愛をまともに受けられず、そのうえ、心の友であるアノンにまで裏切られるとは・・・。」このままでは、女王さまが立ち直れなくなる。
ひかるたちは、すぐに井戸に向かった。
途中の小部屋に、先代の王
「ガレイウス」の幽霊。ユリシス女王の父。先代の王は、生前のおろかな話を聞かせてくれた。
「私は、王としての名声を求め、娘のユリシスのことには見向きもしなかった。ユリシスを人の心がわからぬ、わがままな女王にしてしまったのは、ほかでもない私なのだ。。。」
地下3階まで下りると、女王の助けを求める声が聞こえた。
「アノンがものすごい勢いで言い寄ってくる。」
アノン、
「なあ、ユリシスはん。わてといっしょに、これからスウィートな人生を・・・。お前は、わてを草むらからつれもどしたけったいな旅人やないか! お前のせいで、あの木の実を使って、わての夢をかなえようっちゅう計画が台無しになるとこやったんやぞ。動物的ホンノーがうったえかけたんや! あの木の実を食べたら、人間になれるっちゅてな。そんで、わては、人間になったんや! とやっ! イケメンやで〜っ! ま、ちょっと、かっこよくなりすぎてユリシスはんもたじたじやけどな。」
サンディ、
「ヤバいよ。ひかる。コイツ、このカッコで、自分のこと人間だと思い込んでるって・・・。」
アノン、
「長年、想い続けたユリシスはんといっしょになろうというわての夢を邪魔しに来たんか?」
サンディ、
「ハァ? あんた、女王さまのことが好きだったってワケ? トカゲのくせに。」
アノン、
「じゃかぁしいっ! ようやく、人間になれて、そのチャンスがめぐってきたんや!」
アノンと戦闘。
勝利後、アノン、
「あ、アンタと戦って、わては気づいてもうた。わて、人間ちゃうわ・・・、人間は、クチから火ぃふいたりせえへんもんな。せやけど、ここで、くたばるわけにはいかんのや。ユリシスはんをあの城に。あの敵だらけの城に帰すわけにはいかんのや。わては、死ぬまでやるで・・・。」
ジーラ、
「お待ちください。」
女王、
「じ・・・ジーラ。」
ジーラ、
「お待ちください。ひかるさま。もうこれ以上、アノンをキズつけるのは、やめてください。アノンにもしものことがあったら。女王さまは、もうだれにも心を開かなくなってしまいます。」
女王、
「ジーラ・・・、なぜ? ここまで、ひどいことを言ったのに・・・。」
ジーラ、
「私は、見てしまったのです。女王さまがアノンの前で涙を見せながら話しているのを。わがままな自分が嫌い。両親がいなくてさみしい。女王さまは、そうおっしゃっていました。私は、そのお気持ちをアノンだけでなく、私たちにも打ち明けてほしいのです。つらい気持ちを分け合えば、女王さまも変われるはずだから。」
女王、
「ジーラ。」
アノン、
「あの城には、ジーラはんみたいなやさしいお人もいたんやなあ。これじゃあ、わては、ピエロやて。わては、チカラずくであの城からユリシスはんを引き離そうとした。トカゲの浅知恵やったわ。なあ、旅人はん。わてにはわかる。あんたも人間とちゃうやろ? しかも木の実にくわしいとみたで。わて、もう、こんなチカラいらん。トカゲに戻って、ユリシスはんといっしょにくらすことにするわ。この木の実、あんたにたくすで。ジーラはんのようなお人がいれば、もうユリシスはんは大丈夫や。おおきに。天使のような旅人はん。」
女王、
「あんたも、わたしのことを、ずっと、想ってくれてたのね。ありがとう、アノン・・・。」
女王、
「ひかるといったかしら。ありがとう。命がけで。私を助けにきてくださって。私は、これまで、自分のことを見てくれる人なんて誰もいないと思ってたわ。けれど、今回の件で思い知ったの。ジーラやアノン、私のことを大事に思ってくれてる人がいると言うことを。本当にありがとう、ひかる。これからは、みなと、チカラを合わせ、女王として国を盛り上げますわ。気が向いたら、また、グビアナにもいらっしゃって。アノンともどもお待ちしておりますわ。」
--------
(第43話に続く)