頂上に着くと、そこは、一つの町の形をした彫刻だった。
家々から、そこに住む住民の姿まで、忠実に再現されたものだった。
家の彫刻の中には入ることができなかったが、とある家だけは、入ることが出来た。
ただ、
サンディは、あることに気がついた。
「この町に何か見おぼえない?」
この家の彫刻の中には、恋人たちの彫刻があった。手には、料理の入った皿を持ち、食事の準備をしている。しかし、2人の表情は、さびしげだった。
ふとみると、スライムが1匹いた。スライムによると、
ラボオじいさんは、ずっと一人でここで何年も何十年もかけて彫刻を彫っていた。そして、この町の彫刻を完成させて死んでしまった。
ラボオじいさんは、最期にカラコタ橋で買ったきれいな果実を食べたという。また、この町は、自分のすべて、だから、どうやったらいつまでも残せるだろうかと言っていたという。
その時、地響きがした。スライムは、おびえて、奥に隠れてしまった。
ひかるが外に出ると、巨大な石の怪物が目の前にいた。石の番人だった。
「ラボオではない、この地を荒らすおまえを許しはせぬ。」
石の番人と戦闘になった。
石の番人を倒すと、家の後ろの地下へと続く階段に、おじいちゃんの幽霊がいた。
サンディいわく、
「いまのおじいちゃんってもしかして。」
ひかるは、地下への階段を下りた。
そこには、棺のようなものが1つあった。その棺の前で、おじいちゃんの幽霊は、話し始めた。
「どうやら、あの番人は、私が不思議な果実に、この地の平穏を願ったばかりに生まれたようだ。だが、あれは、私の本意ではなかった。これで、私の小さき友人も安心できるだろう。私は、帰れぬ故郷の地を。手に入らなかった大切なものをここに作り上げたのだ。この地は、幻影。老いぼれの見た最後の夢だが、それでも、クロエ、私はこれで、愛する君のもとへ、故郷エラフィタに帰ったのだ。」
おじいちゃんは成仏し、女神の果実がそこに残った。
サンディいわく、
「ここは、黒騎士騒ぎのときに歌を聞きに来た、エラフィタ村だったのだ。」
サンディはさらに、
「このことを知って、元カノはどう思うだろう。。。」
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ということで、
ラボオじいさんの故郷、エラフィタ村にルーラで飛んでみた。
クロエおばあちゃんは、
「ラボオに会った。山の上に石のエラフィタを作って。面白いこと言うのね。ラボオ・・・、懐かしい響き。たしかに昔、この村生まれのラボオという名の青年がいたわ。私は、彼と恋人同士だった。でも、彼は、腕を磨くために旅に出て、それっきり帰ってこなかった。裏切られたかって思ったわ。私は、あの人のことをずっと待って・・・。なのに、あの人が彫刻でエラフィタを? あるはずないわ。私には、とても信じられない。あの人は、この村を捨てたのよ。わたしといっしょにね。それに、あなたが言ったことが本当だったとしても、今さら遅いわ。時間は決して戻せないのよ。」と言っていた。
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(第34話につづく)